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名古屋高等裁判所 昭和24年(控)324号 判決

被告人

金久吉

外三名

主文

原判決中、被告人金久吉、同車安錫、同安承鎬に対する部分を破棄し、同被告人第三名に対する窃盜被告事件を名古屋地方裁判所に差し戻す、被告人金勳の本件控訴を棄却する。

理由

前略

一、被告人金久吉の弁護人小沢秋二の控訴趣意理由(一)のAの論旨は、原審公判において取り調べた同被告人の年齢と、原判決に掲げたそれと相違していることを指摘してその人違いであることを主張するものであるが、本件記録を通覽するときは、原判決がその年齢を二十八年と記載すべきを二十九年と誤記したものと認め得るのであるから所論は妥当でない、よつて論旨は採用に値しない。

中略

五、被告人金の弁護人森健の控訴趣意について

(1)  その第一点を按するのに、刑事訴訟法第二百九十六條の注意を酌み、原審第一回公判調書を閲するときは「檢察官は起訴状記載の公訴事実中第一事実の立証に付ては現在準備中であるから後日申請する予定であります、第二事実については被害者の司法警察員、檢察事務官並裁判官の一、供述調書、第一回供述調書、証人訊問調書にて立証したいか右各書類を証拠とすることについて被告人等に同意を求めると述べた」との記載がある、いささか杜撰の譏は充れないけれども、本件のような簡單な公訴事実については右程度の檢察官の陳述を以て第二の公訴事実と相俟つて刑事訴訟法第二百九十六條に規定する所謂冐頭陳述である証拠により証すべき事実を明らかにしたものを認めることができるのであつて訴訟法上被告人の権利保護に何等間然するところはないと解すべきである、また論旨中(4)の原審においては檢察官は証拠調の請求をした事実すらないとする論旨は徒に字句に拘泥したものであつて、公判調書を閲読するときは檢察官は明らかに証拠調の請求をしたことを看取し得るものといわなければならない、よつて原審訴訟手続には判決に影響を及ぼす法令の違反は有在しないのであるから論旨は理由がない。

以下省略

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